りぼんの読書ノート

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探偵はバーにいる(東直己)

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大泉洋主演で2011年に公開された映画「探偵はBARにいる」の原作は、本書ではなく、シリーズ第2作のバーにかかってきた電話です。確かに物語的にはそちらのほうがドラマティックなのですが、シリーズ第1作である本書は、日本版ハードボイルドの主人公である「俺」の魅力と、バブルという時代の雰囲気を十分に伝えてくれています。

札幌の歓楽街ススキノのバーを拠点にしている「俺」は、借金の取立てとか、もめ事の仲裁で小銭を稼ぐ便利屋です。もっとも、闇カジノで「おめこぼし」を受ける程度の稼ぎのほうが多い感じです。いつものようにバーの扉を開けた「俺」を待っていたのは大学の後輩。同棲している彼女が帰ってこないというのです。

「どうせ振られただけだろう」と思いつつ調査を開始したところ、彼女の失踪日にラブホテルで殺人事件が発生していることを発見。実は被害者は客ではなく、デートクラブの経営者だったのですが、このあたりから歓楽街に蠢くさまざまな欲望や人間関係が、表面に現れてくるのです。そして第二の殺人が・・。

ハードボイルド作品の鉄則は、「ほろにがい真相」だそうです。ほろにがさを生むものは、綺麗ごとの裏の醜い真相とか、信じていた者の裏切りなのですが、本書も例外ではありません。諦念が身に沁み込んでいるはずの主人公の意外な純情が楽しめる作品です。体格がいいという設定の「俺」ですが、大泉洋はお似合いに思えます。

2017/4