りぼんの読書ノート

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まことの華姫(畠中恵)

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続編の『あしたの華姫』を先に読んでしまったので、急いで本書を読みました。続編だけでも成立している連作短編なのですが、やはり逆順は良くないですね。主な登場人物たちの背景や人間関係の理由は、こちらを読んではじめて理解できることでした。

 

舞台は江戸の一大歓楽街である両国。そこで最近評判になっていたのは、姫様人形のお華を操って一人二役の話芸を売り物としている元人形師の芸人・月草。実は人気を集めていたのは、真実を見せるという井戸の水が凝った珠を瞳とし、真実を見通すと噂が高い華姫のほうだったのですが。『しゃばけシリーズ』などの妖ものを得意とする著者の作品なので、何か人知を超えた存在も潜んでいるかもしれないのですが、とりあえず本書は月形・華姫のコンビと、両国を仕切る親分のお嬢様ながら華姫のファンとなったお夏による謎解き物語。

 

お夏の姉おそのが結婚を前にして事故死してしまった事件の真相は何だったのか(まことの華姫)。近隣の柳原の親分が大火事で見失った子供たちは発見されるのか(十人いた)。西国から来た大店の婿に入った若旦那はなぜ、失踪した嫁の兄を探しているのか(西国からの客)。華姫の言葉を利用して得をしようとする企みは暴かれるのか(夢買い)。そして西国で人形師であったという月草が、芸人となって江戸に流れてきているのか(昔から来た死)

 

5つの短編からなっているますが、重要なのは月形・華姫とお夏の関係の発端が語られる第1話と、月形の過去が明らかになる第5話ですね。他人の悩み苦しみに誠実に応えようとすることで、主人公たちも新しい一歩を踏み出していることが理解できるのです。

 

2021/6