りぼんの読書ノート

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あしたの華姫(畠中恵)

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本書は『まことの華姫』の続編だそうですが、知らずにこちらから読んでしまいました。まあ特に問題なく読めます。本書の主人公である華姫とは、実は両国の見世物小屋で評判になっている姉様人形のお華のこと。柔弱な芸人の月草によって遣われる腹話術人形にすぐないのですが、ここは『しゃばけシリーズ』の著者のこと。この人形もただものではないのでしょう。真実を告げると言われた井戸の底から出てきた2つの玉を目にしていることから、真実を告げるという噂になっているのです。

 

本書は5作の連作短編で一貫した物語となっています。テーマは両国地回りの親分・山越の跡取り問題。長女おそのに婿入りする予定だった正五郎に決まっていたはずだったのですが、おそのの病死で白紙に戻っています。次女のお夏はまだ13歳で婿取りには早いのですが、そろそろ思惑や噂も出てくるころ。しかし花のお江戸で一番の盛り場である両国を仕切る親分になるには、貫禄も人格も商才も腕っぷしも優れていないと務まりません。そのような人材が見つかるのでしょうか。

 

第1話「お華の看病」で登場する春太郎と、第2話「二人めの息子」で登場する秋ノ助は、山越が先代の娘のもとに婿入りする前に産ませた息子ですが、とうに手切れが済んでいます。春太郎には全くその気はないようだし、秋ノ助に至っては武士になっています。しかし山越の叔父の怪しい動きや、秋ノ助の偽物に対処するに際して、華姫と月草は親分に呼び出されてしまいました。

 

第3話「お夏危うし」ではおそのの妹お夏に婿入りし直す可能性があった正五郎が、病の篤い花魁に男気を見せたことで失格。ならばと名乗りをあげた者たちが自分たちで決めた無理難題を解いて候補者を決めようとするのが第4話かぐや姫の物語。もちろんお夏本人の意向を無視した候補者選びなどには意味がありません。しかし第5話「悪人月草」では、本所の同心と岡っ引きが山越を陥れて罪に落とし、一家を解散させようとするのです。親分の危機に際して、華姫と月草はお夏を守り切れるのでしょうか。

 

かなりネタバレ的なことも含めて、長々と書いてしまいました。この後で前巻を読むことになるので、忘れないように丁寧に記しておいた次第です。跡目問題は片付いていないし、両国という盛り場では次々と起こる事件や問題に不足することはないでしょうから、おそらく続巻もあるのでしょう。

 

2021/6