りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

これはこの世のことならず(堀川アサコ)

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昭和初期の青森弘前を舞台にして、盲目のイタコの千歳と、東京モダンガールで元娼婦の幸代のコンビが、奇怪な事件の謎を解き明かしていくたましくるの続編です。前作よりもオカルト度合はアップしていますね。

「魔所」
盲目の千歳に縁談が舞い込んできます。その名家では代々、長男のみが立派な人物で、次男以下はダメ人間なのですが、もちろん縁談の相手は長男です。折しも、魔女伝説が残る沼の畔に建つ小屋で、不良娘で評判だった末娘が殺害されるという事件が発生。彼女と恋仲であったらしい、血の繋がりのないい3男が自首して出るのですが・・。立派といわれる人物には裏の顔もあったようです。

「これはこの世のことならず」
不良少年の亡父が描いた、起こらなかった未来の絵。少年の伯父が経営する劇場の踊り子が、子守をしていた時に不注意で死んでしまった幼児の霊。関東大震災で亡くなった息子の元恋人を呪う母親が作り続ける、不気味な花嫁人形。これらの伏線が全部繋がって、ちゃんと生きている者同士が結婚するに至るハッピーエンドの物語。死者の霊はちゃんと送ってあげないといけないのです。

「白い虫」
千歳の実家の女中シエが、小学校時代に憧れていたお嬢様も、シエを従えていた苛めっ子も、それぞれの願いを叶えるためのマジナイに頼っていたのでしょうか。願いを叶えた代償は、恐ろしいものなのですが。

「馬市にて」
姫神様と馬神様が一対になって祀られるオシラサマですが、馬神様はどこに消えてしまったのでしょう。町に出没するという噂の首のない馬や、馬市で買い手がつかない老いた白馬は、オシラサマと関係があるのでしょうか。弘前の地に根付いた信仰の不思議さと、商売女の純愛が哀しい作品です。

19歳で未亡人となった千歳がイタコになったのは、あっけなく死んでしまった優しい夫と再会したい一心からなのですが、夫の霊とはまだ会えていません。ちょっと京極夏彦さんの世界に近づいてしまったせいか、このシリーズは途絶えていますが、どこかで続編が書かれることもあるのでしょうか。

2018/10