りぼんの読書ノート

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まんまこと7 かわたれどき(畠中恵)

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時が止まったような「しゃばけシリーズ」と異なり、こちらのシリーズではどんどん時間が流れていきます。神田町名主の跡取り息子の麻之助は、愛妻と娘を失った痛みから癒えつつあるようですが、ついに再婚話が登場。「噂」をテーマとする本書の6編の中でも、彼の心境の変化がゆっくりと感じ取れます。 

 

「きみならずして」 

麻之助を訪れた見知らぬ娘は、彼を縁組の相手と言うのです。どうやらいずれも大物の知り合いたちが、麻之助の縁談を勝手に進めているようなのですが、「その娘と縁のあった相手はみな不幸に見舞われる」との剣呑な噂を放ってはおけません。 

 

「まちがい探し」 

地本問屋から、金魚の絵を持ち込んだ男を捜し出すように頼まれた麻之助。次世代を託す画才の持ち主と見込んだとのことですが、見え見えの嘘をつく手代と貸本屋を問い詰めていくと、思わぬ人物が浮かび上がってきたのです。 

 

「麻之助が捕まった」 

裕福な夫婦から、不遇な時期に泣く泣く手放した息子を探して欲しいと頼まれた麻之助。預けた先で育った青年は、本当に彼らの実子なのでしょうか。そして出来の悪い養家の実子が、とんだ災いを持ち込んできます。 

 

「はたらきもの」 

麻之助らを料理屋に呼び出したのは札差の跡取り息子たち。わがままお坊ちゃんたちからの依頼は、天狗や怪異の噂の真相を確かめて欲しいとのこと。その背景には、上方の大店が江戸に出店する計画があるようなのですが、いったい誰が江戸出店の手引きをしているのでしょう。 

 

「娘四人」 

日本橋の両替屋を受け持っていた同心が、理由を説明せずに新人へと交替。店に良くない噂が流れて、娘の縁談にも差しさわりが出ているというので、関係する娘たちから事の真相を探って欲しいとの依頼がなされます。著者にしては派手な展開になる作品でした。 

 

「かたわれどき」 

これまでも登場してきた知り合いの娘・お雪が洪水に巻き込まれて助け出されたものの、悪夢にうなされて数年間の記憶を無くしてしまいました。彼女を助けてくれた商家では、跡取り娘が洪水で亡くなり、婿養子が微妙な立場に追い込まれていたのですが、何か物騒な事件があったのでしょうか。そして物語の終わりに、麻之助は縁談についてある決断をするのです。 

 

2019/11