りぼんの読書ノート

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エチュード春一番 第1曲 小犬のプレリュード(荻原規子)

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和製ファンタジーの名手による新シリーズは、普通の女子大生のもとに、子犬の姿で神が顕現する物語でした。大学生となった途端、父親のロンドン転勤で一人暮らしを始めることになった美綾の家に迷い込んできたパピヨンが「わしは八百万の神だ」と名乗るのです。

その神は、いずれ人間として顕現するための準備段階としてパピヨン犬の姿を取っているとのこと。可愛い外見と、古風な口調と、超現実主義な発想がアンバランスな存在です。一方で、美綾もまたアンバランスなのです。神の声は美綾にしか聞こえないということは、巫女の役割を担っているわけですが、そんな自覚もなくただただ困惑するばかり。

第1話では、大学に入って小学校時代の旧友たちと久しぶりに再会した美綾が怪事件に巻き込まれます。過去を懐かしむ間もなく、謎めいた美女になっていた智佳は、イケメン男子に成長していた光明が、小学校時代に事故死した友人の霊に憑りつかれているというのです。

当時の事件を調べ始めた美綾は、自分もまた、亡くなった友人が救いを求める声を無視したひとりではないかと思い悩みます。そして智佳が、今度はその霊が美綾に憑依したと言い始めた途端に、彼女の周囲で事件や事故が起こり始めるのですが・・。

こういう超常現象こそ神様の出番かと思うのですが、モノクロと名付けられたパピヨンは知らんぷり。周囲で起きていることが心霊現象なのか、人為的なものなのか、美綾は自分で答えにたどりつかないといけないようです。その過程がモノクロの人間研究に役立つというのはシャクだけれど、仕方ありませんね。神とはそんなものなのです。

このシリーズのテーマはまだわかりませんが、世界観はおぼろげに見えてきました。次巻以降の展開に期待しましょう。

2017/9