りぼんの読書ノート

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探偵はひとりぼっち(東直己)

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札幌版ハードボイルドの「ススキノ探偵シリーズ」第4作です。「探偵はBARにいる 2 ススキノ大交差点」として、映画化されています。

物語の発端は、主人公がいきつけのオカマパブのマサコちゃんが、めった打ちにされて殺された事件。念願だったTVの素人手品番組に出演し、見事に準グランプリを獲得した翌日に、殺害されてしまったのです。若い頃にマサコちゃんと愛人関係にあったという、北海道選出の大物代議士の関与が噂される中で、警察の捜査も進んでいない様子。

頼みの綱の友人で空手家の高田は早々に入院してしまい、第1作からレギュラーのバーテンダーや、ヤクザや、新聞記者なども腰が引けてしまっている中、主人公は「ひとりぼっち」で事件の解明に乗り出していきます。依頼人もいないのに探偵が活動するというのは邪道なのですが、殺害された友人のために困難に飛び込んでいくという、主人公の正義感と反抗心が前面に出た作品です。

しかし、捜査妨害どころか、生命の危険を感じるほどの暴力にもさらされた末にたどりついた真実は、意外なものだったのです。真犯人を挙げた刑事が探偵に向かって「きっと、こういうのがこれから増えるんだろうぜ」とつぶやいた言葉は、おそらく当時の2人が想像したであろう以上に、増えてしまった気がします。

ところで、本編の最大の驚きはラストのひとことでした。ハードボイルドにあるまじき展開が、この先探偵を待ち構えていそうです。そもそも前作の依頼者であった、若い女性教師と付き合い始めた時点で、掟破りなのですが。

2018/7