りぼんの読書ノート

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北斎まんだら(梶よう子)

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浮世絵の終焉を描いたヨイ豊に続く絵画歴史小説の主人公は、晩年の北斎とお栄の父娘でした。この2人と深い関係があった渓斎英泉や、北斎の孫で問題児の重太郎を絡ませ、「絵師の業」を見届ける視点人物は高井鴻山こと三九郎。晩年の北斎を信州小布施に招いて、岩松院の天井画制作を依頼した人物です。

面白いテーマですし良く書けているのですが、「二番煎じ感」が漂うのは、先に朝井まかてさんの眩(くらら)を読んでしまったせいでしょう。自ら背負っている業が妖怪として見えてしまうという高井三九郎を除けば、登場人物もテーマもほぼ同じなのです。彼は北斎らが背負う業を見つめることで、自らの業と共存していく覚悟をするのです、ちなみに高井三九郎が北斎の影響を受けた妖怪画を残しているのは史実です。

二番煎じ感があるとはいえ、次々と画風を変えていく破天荒な北斎も、偉大な父を支えながら自分の絵を極めようとしているお栄も魅力的です。彼女に自分が描きたい絵を「三弦を弾く女たち、砧を叩く女、吉原の格子の光と影」とつぶやかせているのは、出来過ぎですけれど。

2017/12