りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

きりきり舞い(諸田玲子)

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18歳の娘・舞の周囲は変人ばかり。ベストセラー作家ながら、酒に目がなくお金は右から左に使ってしまう気難しい父親は十返舎一九。一九を尋ねてきたまま居候になってしまった朋友の息子は、舞に言い寄ってくるのですが、どうやら仇持ちの様子。それに加えて葛飾北斎の娘で、絵を描くことしか興味のない幼馴染で「お栄」までが、嫁ぎ先から飛び出して転がり込んでくるのです。

年が開けたら数えで19。小町娘と褒めそやされ「玉の輿」に憧れてきた舞だって、年増扱いされてしまいます。それなのに、舞に目を留めたハンサムな若旦那も、お旗本の病弱なご嫡男も、怒鳴りつけて追い返してしまう父親は、娘の幸せをどう考えているのでしょうか。実は一九には、自分の母親や自分がした苦労を娘にはかけたくないと思っていたようなのですが・・。

駿府奉行所の同心の子として生まれた十返舎一九は、侍を捨てて入り婿となった材木商から離縁され、江戸へでてきて蔦屋重三郎食客となって数々の作品を書き残しています。しかし侍を捨て、何度も離縁され、何度も旅に出た「事情」は不明とのこと。著者は、一九の人生の行間にあった「事情」を、本書の中で大胆に推理しているんですね。

松井今朝子さんのそろそろ旅にとの比較も楽しいのですが、こちらは『膝栗毛』の川柳を挿んだりしてコミック調に仕上げています。『相も変わらず きりきり舞い』とう続編も最近出版されました。こちらも読んでみようと思います。

2014/5