りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

たけくらべ(樋口一葉)

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24歳で早世した一葉は、短い晩年に傑作を書き綴りました。本書に収録されている3作は、死の1年前「奇跡の14ヶ月」と呼ばれる期間に発表された代表作です。

たけくらべ
廓の街に住む勝気な美少女・美登利と、お寺の息子・信如のせつなく不器用な初恋。子どもらしい喧嘩をした夏と、一足飛びに大人にならざるを得ない秋の対比が絶妙です。何より、文語調の文章に美しさを感じます。声に出して読んだときのリズム感の素晴らしいこと。

にごりえ
丸山福山町の銘酒屋街で働くお力が愛した客の結城朝之助は、後に漱石が名づけた「高等遊民」のような身分でしょうか。しかしお力は、彼女に入れ込んで家業の蒲団屋をつぶしながら未練を断ち切れない、以前の馴染客・源七の狂気に巻き込まれてしまうのです。せつなくて残酷な小説ですが、やはり一葉文学独特の美しさを感じます。

「十三夜」
今で言う精神的DV夫との離縁を決意し、幼い息子との別離すら覚悟して夜遅く実家に戻ったお関。娘に同情する母親と、我慢を言い聞かせる父親。人生をあきらめて帰路につくお関。帰りの車を引いた男が、お関の嫁入り後、虚無に飲み込まれてしまった初恋の男だったという奇縁。全てを静かに照らし出す十三夜の月。これ以上の説明は不要でしょう。

やはり「名作」と謳われる作品は、実際に読んでみなければいけませんね。

2013/7