りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

アンマーとぼくら(有川浩)

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3日間の休暇を取って久しぶりに沖縄に帰郷し、母親と一緒に家族の思い出が詰まった地を巡る物語ですが、この親子は義理の関係なのです。

おそらく30代になっている主人公が小学生の時に、実母が癌で急死。その後1年もたたず、心の整理がついていないうちに父親が沖縄で再婚。北海道から転校してきた主人公は、2人めの母親にも、沖縄にも馴染めません。そして、まるで子供のように家族を振り回してきた父親は、大人になりきれないまま数年後に事故死。今は東京で家庭も仕事も持つ主人公は、義母とは和解していたものの、頻繁に沖縄に帰郷することはなかったようなのです。

ガイド業を続けている母親の案内で沖縄の名所をまわりながら、このような2人の背景が次第に明かされていくのですが、何かおかしいのです。主人公の東京での記憶がおぼろげになっていたり、少年時代の自分と遭遇してアドバイスをしたりと、何か普通ではありません。ひょっとして主人公はこの世の者ではなくなっているのでしょうか。そしてタイムリミットの3日間が過ぎ去るのですが・・。

かりゆし58の「アンマー」に着想を得た作品だそうです。タイトルにある「ぼくら」とは、子供のようだった父親と実際に子供だった主人公のことと思いますが、母親に対して特別な時に用いる「アンマー」という呼びかけは何を意味しているのでしょう。

最後には現実に戻る物語ですが、底は浅いかな。「ライトノベル作家」を自称する著者の真骨頂は、やはりラブコメにあるのでしょう。

2017/12