りぼんの読書ノート

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セメント・ガーデン(イアン・マキューアン)

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主人公の少年は14歳。発作を起こして突然死した父親が残したものは、庭の手入れをしようと買い付けた大量のセメントでした。その翌年に母親が病死すると、少年と姉は、母親の死体をコンクリート詰めにして地下室に隠します。母の死を大人たちに知らせると、幼い弟や妹は施設に入れられ、少年も姉も離れ離れになってしまうことを恐れたのです。

そして、4人の子供たちだけの奇妙な夏休み生活が始まります。少年は覚えたばかりの自慰行為にふけり、ハイティーンの姉はボーイフレンドと遊びまわり、妹は部屋に閉じこもり、幼い弟は皆のペット状態。しかし姉のボーイフレンドが家を尋ねて来た時から、何かが変わり始めます。

著者はこの作品について、「社会的なコントロールが解けて自由を得た子どもたちが陥った麻痺状態」を描いたものと述べています。確かに、母親の死んだ後の家は、まるで眠ったようになってしまうんですね。

母親の死体遺棄姉弟の近親相姦というショッキングなテーマを扱っていますが、妙に現実感を欠く雰囲気の中で物語が進んでいくせいか、それほどグロテスクな印象は残りません。もちろん、そういう効果を狙っているのでしょう。

2011/12