りぼんの読書ノート

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ゴッサムの神々(リンジー・フェイ)

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1845年のニューヨークというと、映画「ギャング・オブ・ニューヨーク」で描かれた、アイルランド移民とアメリカ生れの貧しい白人たちが、徒党を組んで抗争を繰り広げていた時代と重なります。この年に、ニューヨーク市警が創設されました。

大火災で顔に火傷を負い、貯金も夢も失ったティムは、嫌っている兄ヴァルの口利きで創設まもないNY市警の警官に採用されます。ある夜、血まみれのネグリジェ姿で彼にぶつかってきた少女バードの証言から発見されたのは、胴体を十字に切り裂かれた少年の死体。

しかしそれは、始まりに過ぎなかったのです。街外れの荒地から発見された19人の子どもの死体。教会に貼り付けにされた少年。闇に蠢く馬車に乗った黒頭巾の男。警察に届けられた犯行声明文・・。特命捜査を命じられたティムは、少女売春、宗教対立、移民排斥というニューヨークのダークサイドに直面します。それは同時に、ヴァルとの兄弟対立と、幼い頃から慕っていた牧師の娘マーシーとの関係に決着をつけることになっていくのですが・・。

どうやら、シャーロキアンであるという著者が創造したのは、副題にある「ニューヨーク最初の警官」というよりも「世界最初の探偵」のようです。1845年というと、ドイルのホームズよりも早く、ポーのオーギュスト・デュパンと同時期ですから。

また、事件と時代背景の関係が見事です。ティムという主人公の造型はやや類型的ですが、彼を取り巻く人間関係が丁寧に書き込まれているのがいいですね。弟に対して罪悪感を持ち続けるヴァル。ティムの単純な思いを越えたところで生きていたマーシー。幼さを残した嘘つき少女のバード。売春宿の女主人シルキー。3部作とのことですが、このうち誰が再登場するのでしょう。

2014/7