痛々しい女性たちの「生と性」を天才的な発想で描いた『燃えるスカートの少女』に続く第二短編集です。精神的な痛みが、肉体的な痛みとして表現される小説は減った感じで、私としては読みやすくなりました。とりわけ、ラスト2編は美しい作品です。
「死を見守る」 2週間以内の死を宣告された10人の男でいたが、数人は誤診でした。長く生きることになった男は幸せだったのでしょうか。
「終点」 小人をペットとして飼っていたぶっていた男は、なぜ小人を解放したのでしょう。彼自身が小人になりたかったのか。それとも仲間が欲しかったのか。
「オフ」 パーティで黒髪の男、赤毛の男、ブロンドの男の3人にキスをするという女性の目標は、なぜ達成できなかったのでしょう。
「出会い」 互いに相手を気に入らない出会いでしたが、そんな出会いが自分を変えてしまうこともあるのです。好きなタイプの作品です。
「デビーランド」 高校時代に皆から軽蔑されて苛められていたデビー。でもそれが、退屈な人生でただひとつ記憶に残ること。苛めた側でも、苛められた側でも。
「マザーファッカー」 行く先々でシングルマザーたちをファックしていたさすらいの男は、カリフォルニアで真実の愛に目覚めたのでしょうか。
「果物と単語」 その店の売り物は「単語」。固体より液体、液体より気体のほうが高価で貴重。でも気体の単語は壊れやすいのです。
「ジンクス」 いつも一緒にいたキャシーとティナの友情は、道ではぐれたことから終わりを迎えてしまいます。
「おまえのあばら肉を取り除く(私の歯から)」 なんとも凄いタイトルですが、カニバリズムではありません。薬物自殺未遂を繰り返す彼女にうんざりしながらも離れられない男の物語。
「アイロン頭」 カボチャ頭の両親から生まれたアイロン頭の少年は、長生きできなかったのですが、家族からは愛されていたのです。
「ジョブの仕事」 作家、画家、俳優、料理、ピアニスト、ダンス、建築・・。神様に生きがいを取り上げられていく男が、最後に選んだ仕事とは?
「飢饉」 捨てても捨てても戻ってくる7つのジャガイモと過ごす女性。でも、食べちゃったジャガイモは戻ってきませんでした。
「塩胡椒シェイカー殺人事件」 塩好きな妻と胡椒好きな夫。相性は良かったのですが、健康を害してしまってはいけません。
「主役」 指が鍵になっている少年が、人生で自分の指に合う扉を探していく物語。「これからは世界のすべてのドアは、彼にとっても、他のすべての人と同じように閉ざされている」という、ラストの一文が最高です。
「聖歌」 村で生まれ始めた不思議な赤ちゃんたち。背が高い。ガラス製。変身。鋭い耳・・。妙な子供たちがそれぞれ役割を担って、もっと妙な子どもたちを生んでいきます。この作品もラストがいいですね。「世界は祝福に溢れている。私の遺伝子はゴム紐でありロープ。あなたはあなた自身がその中で暮らすことのできる構造を、自分で作ってごらんなさい。」
2014/7