りぼんの読書ノート

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モッキンバードの娘たち(ショーン・ステュアート)

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「これはわたしが母親になるまでの物語」と一人称で語られる本書は、主人公のトニが母エレナを埋葬する場面から始まります。美女だったものの奔放で嘘つきで浮気性で、何より魔術めいた能力を持っていた母に、トニは辟易していたのです。

しかしトニはその晩、母が使役していた小さな神々ともいうべき6人の「乗り手」たちに憑りつかれてしまいます。変身能力を持つモッキンバード(マネシツグミ)、虚栄を拒む説教師、浮気性でお洒落なシュガー、コミカルで残酷なピエロ、家族に手厳しい未亡人、不敗のギャンブラーのミスター・コッパー、そして乗り手たちとは別に時々登場する小さな迷子の女の子。

母と異なる道を歩もうと堅実に生きてきたトニの生活は、いきなり掻き乱されてしまいます。年齢からくる焦りから人工授精で妊娠したことは自分の決断でしたが、勤め先からいきなり解雇され、母と性格が似ている妹のシュガーの結婚話に駆り出され、あげくの果ては存在すら知らなかった異父姉が北欧から登場。トニが自分の生き方を取り戻して、母になる自覚をするまでの10か月間の騒動が、コミカルに描かれていきます。そして「迷子の女の子」の正体も、ついに明らかになるのですが・・。

本書の舞台であるヒューストンは出張で何度も行った場所であり、高級ショッピングセンターのガレリアや、巨大化学工場が立ち並ぶベイタウンとか、リゾート地のガルベストンや、あちこちに存在するバイユー(沼地)などを思い出しながら読みました。距離は離れていますが、気候的には同じメキシコ湾岸のニューオーリンズと同じであり、ブードゥの匂いも感じる地域です。

2017/12