りぼんの読書ノート

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まひるの月を追いかけて(恩田陸)

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橿原神宮藤原京跡、今井、明日香、山の辺の道、白毫寺、斑鳩と、早春の奈良を舞台にしたロードミステリーです。二転三転するストーリーの面白さに加えて、かなりダークなラストは気に入りました。

主人公は会社員の静。奈良で消息を絶ったという異母兄・研吾を一緒に捜索して欲しいという、兄の恋人の優佳利からの依頼で、奈良へと向かいます。もっとも静と研吾との関係は希薄で、優佳利とはかなり以前に2度しか会ったことがないという関係。いきなりオイオイです。

案の定、旅の同行者は優佳利ではなく、研吾を挟んで三角関係にあった妙子という女性。しかも優佳利は、直前に自殺とも思える無謀運転で交通事故死していたのです。さらに研吾は行方不明などではなく、妙子は彼とアポを取っていたのです。実は妙子は、研吾と静の関係を疑っていて、2人を直接ご対面させて証拠を握ろうとしていたのでした。

しかし静には、思い当たることなど何もありません。さらに研吾は出家するなどと言い出し、重い病に罹っていたという妙子は、途中で病死してしまう始末。では、優佳利も妙子も袖にした研吾が、思いを抱いていた相手とは誰だったのか・・という物語。

タイトルの「まひるの月」とは、確かにそこにあるのに見えない真実という意味のようです。ラストで明らかになった「意外な相手」を含めて、かなり現実感の乏しい物語なのですが、最後まで読ませてしまうのは、古都・奈良の力であったのでしょう。本書に登場した中で唯一未訪問だった白毫寺には、そのうちに行ってみようと思います。

2017/12