りぼんの読書ノート

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世界が終わる前に- BISビブリオバトル部(山本弘)

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翼を持つ少女幽霊なんて怖くないに続く、「ビブリオバトル・シリーズ」の第3弾です。本書ではついに、ミステリ・ファンの方々が待ち望んでいた、ライバル校のミステリ研会長・早乙女寿美歌が大活躍。いったい彼女はどのような「世界がひっくりかえる凄まじい光景」を見せてくれるのでしょう。

しかしその前に、本編の伏線ともなっている番外編の「空の夏休み」を読まなくてはなりません。新米ビブリオバトル部員でSFオタクの伏木空が、部員仲間の小金井ミーナに頼まれて、コミケの売り子として駆出される物語。ニュースで断片的に見たことしかないコミケの様子や作法がわかるようになっています。著者の分身であろう特撮オタクの顧問の先生たちが延々と交わす、オタク度満点の場外バトルが楽しめます。空が紹介したのはロックイン(ジョン・スコルジー)

本編の「世界が終わる前に」では、ケレン味たっぷりの早乙女寿美歌が大活躍。『毒入りチョコレート事件』を紹介する直前に全員にチョコレートを食べさせ、聞き手に毒殺の怖れを感じさせる伏線をたっぷり引いておくという見事さ。作りこんだキャラも、自分自身に対する謎を解かせるように仕向ける仕掛けも含めて、まさに全人格がミステリなのです。

しかし最後の最後に誰も予想しなかった展開が起こり、まさに「世界がひっくりかえる」のですから、著者の仕掛けも見事なもの。この作品の叙述自体が、読者をミスリードする構成になっていたのでした。著者は相当苦労したようですが。

本書では、ノンフィクションしか読まない埋火くんがほとんど活躍しませんでしたが、続編もあるようです。ラストで意外な人物から告白された空の対応も、どうなるのでしょう。ちなみに空が紹介したSFは『ひとめあなたに(新井素子)』パララバ静月遠火)』でした。どちらも未読の作品です。

2016/8