りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

サブマリン(伊坂幸太郎)

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チルドレンから12年も経っていたのですね。破天荒な家裁調査官の陣内が再登場。語り手は実直な部下の武藤です。

陣内のキャラについては、武藤の言葉を引用しておきましょう。「自信満々で何でもできるような態度で、はた迷惑で、負けず嫌いで、変なことにこだわるし、無茶ばかりで、口癖は面倒くさい」という人物なのです。しかし、どこに焦点が当たっているのかわからない彼の行動が奇跡を生むのも、また事実なのです。

今回の調査対象者は、無免許運転のあげく歩行者をはねて死なせた少年の棚岡佑真。心を開かず話に応じない佑真に手を焼く武藤でしたが、陣内は彼を知っていました。彼は交通事故で両親を失い、さらにその後も交通事故で友人を失くしていたのです。今度の事故は、それらの過去と関係があるのでしょうか。

やはり武藤が担当している、脅迫文投稿者たちに脅迫状を送り付けたあげく自首した小山田少年や、10年前に佑真の友人をはねたことを悔やみ続けている若林青年や、『チルドレン』で陣内とともに銀行強盗の人質になった全盲の永瀬らも登場。彼らの存在が、加害者と被害者の因果に絡み、世の中の理不尽さをあぶり出し、正義の在り方に疑問を投げつけてきます。

本書でも、多彩な伏線が、全部回収されましたね。トリックスターの陣内がばらまいた、あまりにもぶっ飛んだ言動が全部繋がってくるラストには、小気味の良さを感じます。それにしても、正義とはなんと悩ましいものなのでしょう。

2017/11