りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

GOSICK GREEN(桜庭一樹)

イメージ 1

新大陸の到着した早々、移民一世で財を成した女傑の高層ビル爆破事件や、戦争中に仲間を撃ったというボクサーの錯覚を解いたヴィクトリカが開業したグレイウルフ探偵社には、さっそく依頼人が殺到。

独創的な建築家によって建造されユニークな仕掛けが随所に施されていたものの、その後の再開発で均質化されてしまったセントラルパークのオリジナル地図を捜して欲しいというニューヨーク市職員からの依頼。前夜脱獄した伝説の銀行強盗KIDを捕まえて欲しいという看守からの依頼。見習い新聞記者となった一弥とともにセントラルパークに向かったヴィクトリカの前で、年老いたKIDの執念が事件を引き起こすのですが・・。

本書のタイトル「GREEN」は、アメリカドル札の色ですね。本書のテーマは、経済合理性に基づく都会の発展過程で切り捨てられた者たちの復讐なのでしょう。神話的オカルト色の強い旧世界から、物質文明に支配された新世界に移ってきたヴィクトリカと一弥は、脱落者側に共感を抱きそうなものですが、問題はシンプルではありません。復讐を誓う脱落者も、物質文明の中ではある種の怪物へと変貌を遂げているのです。

本書で登場する金融王や、BLUEから登場している自動車王や、時系列的には後の話であるREDに登場したマフィアやFBIなどは、「旧世界の遺産」であるヴィクトリカの前に立ちふさがっていくことになるのでしょうか。今後の展開も楽しみです。

ラストでヴィクトリカが手紙を書いた相手は、異母兄のグレヴィールでした。戦争を生き抜いて俳優になっていた兄もまた、新大陸へとやって来そうです。

2017/10