りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

GOSICK PINK(桜庭一樹)

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新大陸に到着した日に高層ビル爆破事件に巻き込まれたヴィクトリカと一弥ですが、とりあえずは一弥の姉・瑠璃の家に仮住まい。本書は、2人が新大陸で「ジョブ&ホーム」を得て、新生活を開始するようになるまでの物語です。

もっとも、生まれてからずっと幽閉されていたヴィクトリカは、一弥が「ジョブ&ホーム」のために張り切る理由を理解できません。迷子になって保護された警察の留置場で、ずっと暮らしても構わないとまで言い出す始末。しかし留置場で出会った2人の男が持ち込んだ謎を解く過程で、一弥と2人で新生活を始めることの大切さを理解していくのです。

2人の男とは、全米チャンピオンへの挑戦が決まっているボクサーとマネージャー。実は3人とも戦争中は同じ部隊に属していた友人同志だったのです。しかしクリスマス休戦明けに橋の上で行われた戦闘で、後のチャンピオンが仲間を撃ったと非難し合う関係になっていました。本人は間違いなくドイツ兵を撃ったはずなのに、なぜ仲間が死んでしまったのか。もちろん「真実の断片」を集めたヴィクトリカに解けない謎はありません。

一方で一弥は新聞社に仮採用され、前巻で知遇を得た人物の好意で、イーストビレッジに探偵事務所を開くための「仔馬の部屋」と、ブルックリンのクランベリーストリートに移民アパートを借りることができました。2人の新生活は、このようにして始まったのです。本巻が「ピンク」なのは、移民の花・クランベリーの色だったのですね。

2017/9