2013年に、市の財政破産によって存続の危機にさらされたデトロイト美術館は、どのようにして生き延びることができたのでしょうか。そこには、表紙になっているセザンヌの「オルタンス夫人像」をはじめとするコレクションに寄せられた、市民たちの深い愛情があったのです。
もともとデトロイト美術館の収蔵品は、フォード家、シェルダン家、フェリー家など、デトロイトの富裕な美術愛好家たちの多大な寄付に拠るところが大きいとのこと。本書においても、美術品収集家ロバート・タナヒルが、ドガ、マネ、ルノワール、ゴッホ、セザンヌ、マティスなど550点もの収集品を遺贈した物語に一章が割かれています。
市井のファンから差し出されたなけなしの寄付からヒントを得て、美術館を守ろうと立ち上がったキュレーターたちの姿は、ほとんど実話なのでしょう。コレクションは街の歴史そのものであり、未来に残すべき文化的資源であるという、市民の熱意が守った美術館の物語です。
2017/9