りぼんの読書ノート

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木曜組曲(恩田陸)

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恩田さんがまだ「新進気鋭のミステリ作家」と呼ばれていた時代の作品です。耽美派小説の巨匠であった重松時子が、謎の薬物死を遂げてから4年。彼女に縁の深い女性たちが集まる「偲ぶ会」は、彼女の死を巡る「告発と告白の会」になっていきます。

集まった女性は5人。時子の従姉妹ながら血縁はないノンフィクションライターの絵里子。時子の姪であるミステリ作家の尚美。やはり時子の姪で純文学作家のつかさ。時子の異母妹で出版プロダクションを経営する静子。それに加えて、時子のデビュー当時から担当してきたベテラン編集者のえい子。

晩年の時子が、筆の衰えからノイローゼ気味であったことが明らかになってきます。時子の死には、5人とも部分的には関係していたこともわかってくるのですが、彼女は毒を飲んだのか、飲まされたのか。そもそも「偲ぶ会」を「告発と告白の会」へと仕立て上げたのは、誰かの意図なのか。

ある登場人物による「小説に答えなんてない。余韻を残せばいい」という言葉が、本書の結論なのでしょう。そして「時子は、彼女の死を受け止めた4人の女たちの成長を祈っている」と思うことが、一番生産的であることには間違いありません。たとえそれが真実ではなかったとしても・・。

2017/6