りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

活版印刷三日月堂3.庭のアルバム(ほしおさなえ)

f:id:wakiabc:20200525141936j:plain

祖父が残した川越の小さな活版印刷所「三日月堂」を再開させた弓子さんの活動は、町の人々を結び付けるだけではありません。「起承転結」の「転」にあたるシリーズ第3巻では、彼女自身の過去が少しずつ語られるとともに、彼女自身の夢が少しずつ形になってきているようです。 

 

「チケットと昆布巻き」 

小さな出版社に勤める青年は、旅行雑誌で川越の映画館を取り上げた際に三日月堂と接点を持ちます。家業のかまぼこ店を継いだ兄を見下す一方で、大手会社に勤務する同級生たちに引け目を感じていた青年は、弓子との会話の中で働く意味を見いだせたようです。 

 

「カナコの夢」 

旅行雑誌で三日月堂を見た女性は、そこが大学時代の親友カナコが嫁いだ実家であることに気づきます。まだ幼い弓子を遺して20代の若さで病死したカナコは、和歌に心を託していました。三日月堂を訪れた女性は、含めてカナコを偲ぶ会を開こうと不仲になった友人を訪ねる決意をします。 

 

「庭のアルバム」 

母が参加した偲ぶ会の招待状を見た高校生の娘は、活版印刷に興味を持って一日体験に訪れます。写生は好きなものの自分に自信を持てず、将来に希望を持てないでいた少女は、やがて失われる祖母の家の庭の植物を描き留めることに意味を見出します。 

 

「川の合流する場所で」 

盛岡の大手印刷会社の埼玉支店に勤める青年は、活版印刷イベントを訪れた際に弓子と出会います。三日月堂の動かない大型印刷機が、盛岡で眠っている機械と同型であると知った弓子は、それを体験するために盛岡へと向います。実は彼女にはもう一つ目的がありました。そこは亡くなった母の出身地だったのです。 

 

2020/6