第4巻で完結したはずの物語ですが、登場人物たちの過去を綴った第5巻に続いて、未来の物語である第6巻も番外編として出版されました。今までに登場した人々の中で、誰が再登場しているのでしょうおか。
「マドンナの憂鬱」
川越の観光案内所で働く女性が、同じ建物に入っている運送店のハルさんらとともに富山に旅行。ガラス工芸を体験して、訪れた人に新しい出会いをもたらす自分の仕事の意味を見出します。
「南十字星の下で」
高校卒業を控えた文芸部メンバーが、卒業文集を製作します。もっとも文才ある問題児だった女生徒は、母とオーストラリアに引っ越して、創作はやめると言うのですが・・。彼女はいつか英語で創作を再開するのかもしれません。
「二巡目のワンダーランド」
生まれて3日で亡くなった姉のあわゆきの名刺を作った広太も、中学校受験を迎える年になりました。息子の成長を見る父親は自分の少年時代を思い返し、二巡目になってはじめてわかることがあることに気付くのです。
「庭の昼食」
バイト先の三日月堂に就職するつもりの女子高生は、弓子さんの亡くなった母カナコさんのバンド仲間が発行するという遺作の歌集作りを手伝って、学ぶことの大切さを知るのです。彼女はきっと、大学にも進学するのでしょう。
「水の中の雲」
かつて三日月堂で制作した親友の結婚式招待状をデザインした男性は、朗読会メンバーの図書館司書の女性に好意を抱きます。コウジ栽培から始まって最後の仕上げに紙を漉く和紙製作過程は、交際から結婚に至る過程と似ているのかもしれません。この時点で、弓子さんはすでに悠生さんと夫婦になっているのですね。
「小さな折り紙」
なんと弓子さんに息子が生まれています。弓子さんも通った保育園の卒園式で、息子の拓クンはゴーシュを演じることになりました。2代目園長先生は、誰の胸の中にも大切な人たちの「あと」が刻まれていると思うのです。印刷が「あとを残す行為」であるかのように。
2020/11