りぼんの読書ノート

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活版印刷三日月堂2.海からの手紙(ほしおさなえ)

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川越の町にある小さな活版印刷所「三日月堂」を舞台にした、連作短編集の第2巻。亡き祖父母の跡を継いで印刷所を再開した弓子が、活版印刷が持つ暖かさを依頼人に届けていきます。 

 

「ちょうちょうの朗読会」 

朗読講座を受講している4人の若い女性たちが、朗読会を開くことになりました。自分の朗読に自信を持てないでいる女性は、活版で刷られたパンフレットから、自分の個性を見出していきます。 

 

「あわゆきのあと」 

自分が生まれる前に、産後すぐに亡くなった姉がいたことを知った小学生の男の子は、家族や死について意識し始めます。彼は両親に、亡き姉の「ファースト名刺(赤ちゃんに贈る、名前だけの名刺)」を贈ろうと決意するのですが・・。 

 

「海からの手紙」 

学生時代の失恋がもとで学んでいた銅版画から離れてしまった女性は、弓子さんと話すうちに銅版画への情熱を思い出していきます。再びニードルを手に取って豆本を作り出すことで、彼女の心の傷は癒されたようです。 

 

「俺達の西部劇」 

映画評論誌に寄稿していた亡父が、三日月堂の先代主人と交流を持っていたことを知った男性は、そこに父親の遺稿を組んだ版が残っているのではないかと思いつきます。息子に充てて綴られた遺稿は、彼と亡父との確執を解きほぐしていくものでした。 

 

日月堂が、活版印刷によって人々の思いを繋いでいく場所になってきたようです。そろそろ弓子さん自身の物語も語られる頃合いでしょうか。 

 

2020/5