緊急事態の外出自粛は耐えられるけれど、図書館の長期休館は辛い。6月にアップしたレビューは5月に読んだ本が大半ですが、休館前に急いで借り出した大作と、近くのブックオフで大量購入した100円均一本の両極端です。
1.ヒア・アイ・アム(ジョナサン・サフラン・フォア)
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の著者が11年ぶりに上梓した本書は、著者自らの自伝的要素を散りばめつつ、民族と家族をめぐるテーマに挑んだ大作でした。妻との離婚問題、息子たちの教育問題、ヘイト主義に染まった父親、死を目前にした祖父と老愛犬を抱えたユダヤ人男性が主人公。そんな時に中東で巨大地震が発生。主人公は家族の問題から逃れるように、建国以来の危機に陥ったイスラエルに向かおうとするのですが・・。逃れることができない家族の問題は、民族の問題と似通ってしまうようです。
2.楽園への道(マリオ・バルガス=リョサ)
19世紀前半の女性解放運動家フローラ・トリスタンと、彼女の孫であるポール・ゴーギャンは、ともに著者の祖国であるペルーと深く関わった人物です。DV夫のもとから逃亡し、アジテーションを行いながらフランス各地を巡るフローラと、ポリネシアで奔放な性生活を送りながら神秘的な啓示を得て名作を続けたゴーギャンは、決して到達することのない「楽園」を目指していたのでしょうか。
3.通過者(ジャン=クリストフ・グランジェ)
ボルドーで発見された変死体と記憶喪失の男は関わっているのでしょうな。しかし記憶喪失の男を診察した精神科医は、自分自身の記憶を疑い出すのです。タイトルの「通過者」とは、本書のカギとなるのは「解離性フーグ(遁走)」という特異な精神障害の症状のこと。単なる記憶喪失ではなく、記憶の断片から新たな人格や過去を創り出してしまうというのです。
【その他今月読んだ本】
・湖底の城 1巻(宮城谷昌光)
・湖底の城 2巻 (宮城谷昌光)
・湖底の城 3巻 (宮城谷昌光)
・湖底の城 4巻 (宮城谷昌光)
・湖底の城 5巻 (宮城谷昌光)
・湖底の城 6巻 (宮城谷昌光)
・湖底の城 7巻 (宮城谷昌光)
・湖底の城 8巻 (宮城谷昌光)
・湖底の城 9巻 (宮城谷昌光)
・ポルトガル短篇小説傑作選(ルイ・ズィンク/編)
・エンタングル:ガール(高島雄哉)
・翡翠城市(フォンダ・リー)
・ひとの恋路をジャマするヤツは(堀川アサコ)
・縁切寺お助け帖(田牧大和)
・The MANZAI 1(あさのあつこ)
2020/6/30