りぼんの読書ノート

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アマディス・デ・ガウラ 上(ガルシ・ロドリゲス・デ・モンタルボ)

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17世紀初めに出版された『ドン・キホーテ』において、「ドン・キホーテの頭を狂わせた物語」として言及されているのが、その100年前に出版された本書です。13世紀から14世紀にかけてフランスで形作られた中世の騎士道物語が、スペインに伝わって完成形に到達したものと言えるでしょう。秘められた出生、貴種流離、想い姫に捧げた純愛、見知らぬ土地での冒険、強大な敵との対決、魔法使いの存在、玉座へ至る道など、騎士道物語のエッセンスがぎっしりと詰まった作品です。 

 

物語は、ガウラ(フランス)王ぺリオンとスコットランド王女エリセーナとの間に生まれた「不義の子アマディス」が、次女によって川に流されて始まります。スコットランドの騎士によって海から拾われたアマディスは「海の貴公子」と呼ばれて大切に育てられた後に騎士となり、ブリテン王リスアルテの王女オリアナと出会って永遠の愛を誓うのでした。 

 

やがてぺリオンとエリセーナは正式に結ばれ、証拠の指輪によってアマディスが実子であると知られますが、彼は愛するオリアナを慕ってブリテン王に仕える道を選びます。アマディスはリスアルテ王を窮地から助け出したり、遍歴の旅に出て邪悪な魔法使いや巨人たちから囚われの騎士や姫君を救出したり、高貴な魔法で守られた島で栄誉を得たりするわけです。同母弟ガラオール、異母兄フロレスタン、従弟アグラヘスらもそれぞれに超一流の騎士となってアマディスと共闘。やがて秘密裡にオリアナ姫と結ばれるのですが、これを公表できないことで後に災難が降りかかってくるという物語。

 

上巻は、騎士として最大級の栄誉を得るに至ったアマディスが、讒言によってリスアルテ王の宮廷を去ることとなり、オリアナ姫との仲も裂かれてしまうところで終わります。これが下巻での大戦争に繋がっていくのですが、名誉を重んじる騎士と言うものはやっかいですね。内容のわからない約束をして窮地に陥ったり、自分の想い姫を天下一の美貌と認めさせるために決闘したり、身分や名前を隠すことが美徳であったり、意味不明な予言を受け入れたりしなくてはならないのです。本書で登場する女魔法使い「顔知られずのウルガンダ」は、なかなかのキャラでした。 

 

2020/7