りぼんの読書ノート

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錠前破り、銀太 首魁(田牧大和)

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デビュー作に端を発する「濱次お役者双六シリーズ」のスピンアウトで、『緋色からくり』の女錠前師・緋名も登場するこのシリーズも、第3作にあたる本書で区切りがついたようです。

 

歌舞伎女形の濱次や緋名も通う蕎麦屋の銀太、秀次の兄弟が主人公。彼らの幼馴染であった貫三郎が、兄の急死で実家に迎えられ、与力助役となったことで事件に巻き込まれています。誰かを陥れて楽しんでいる金持ち連中の集まり「三日月会」に目を付けられ、前作ではその手先であった紅蜆と蓑吉に苦しめられてしまったのです。

 

しかしその2人が心中したという驚きの情報がもたらされました。しかも「三日月会」の一員と思しき大店が謎めいたお裁きで取り潰しにあうという事件も発生。これは「三日月会」の仲間割れを意味しているのでしょうか。もと義賊であった銀太は、首魁と思しき新任の与力に探りを入れ始めるのですが・・。

 

ラスボスが意外な人物であるのは当然ですね。この種の物語をたくさん読んでいるはずの私も、すっかり騙されてしまいました。ただ騙されたのには理由があって、この人物はおよそラスボスにふさわしくないキャラなのです。従ってエンディングもアンチクライマックスとならざるをえないのですが、それも著者の巧みな計算のうちなのでしょう。スピンアウト作品が本編よりも迫力あってはいけないのかもしれませんしね。

 

2022/5