りぼんの読書ノート

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陰陽師阿部雨堂(田牧大和)

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『三人小町の恋』というタイトルで2011年10月に出版された作品が、文庫化に際して改題されたとのこと。「安倍晴明の傍流のそのまた傍流の末裔」と称する拝み屋家業の阿部雨堂と、養女で弟子である12歳の娘・おことが活躍する「お江戸呪いミステリー」。

ある日雨堂を訪ねてきた客は、3人の美しい町娘。3人は恋敵であり、牛の刻参りの標的がこの中の誰なのか知りたいというのです。普通は犯人を知りたいものだと思うのですが、案の定ウラがありました。彼女たちは、その中のひとりの許婚を陥れて殺害した悪人たちをおびき出そうとしていたのです。

とはいえ牛の刻参りは幕府に禁じられている犯罪であるのみならず、実際に禍を招きかねない強い呪いです。もちろん悪人たちの報復だってリアルな脅威。雨堂とおことは、どうやって彼女たちを諭して助け出すのでしょうか。

阿部雨堂が「偽陰陽師」であることは、はじめから明かされています。しかし不思議な力が存在することも音も否定されていないようで、読者は論理的な謎解きが常識的な枠組みを超えるのかどうか、どきどきしながら見守ることになります。このあたりがミソですね。

この著者は、魅力的な登場人物とストーリーを次々と生み出しながら、長いシリーズにすることを避けているようです。5作まで出ている濱次お役者双六シリーズ以外は、単発かせいぜい2作まで。雨堂とおことも、本作以降6年間放置されているようですが、どうなるのでしょう。

2017/2