りぼんの読書ノート

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ジャングル・ブック(ラドヤード・キプリング)

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子供のころにジュブナイル版で読んだ覚えはありますが、きちんと読んだことはありませんでした。今年の夏にディズニーが映画化した途端に、各出版社が文庫で競作。商魂の逞しさを感じますが、こちらも映画化がなければ読もうと思わなかったのですから、世の中とはそういうもの。

物語の大筋は有名です。虎のシーア・カーンに襲われた村で生き残った幼児が、母オオカミに助けられてモーグリ(カエル)と名付けられ、オオカミ王アキーラ、熊のバルー、黒豹バギーラ、ニシキヘビのカーらに見守られながら育っていく物語。猿の群れに攫われた所を助け出されたり、獰猛な赤犬の群れの襲来から仲間を守ったりしながら、ついに彼を敵視するシーア・カーンと対決。

映画でもジュブナイル版でも、虎との対決がクライマックスになっているようですが、小説ではそこはまだ序盤です。一度は人間の村に戻りながら「悪魔の子」として追い出されたモーグリは、狼にも人間にもなりきれない悩みをどう解決していくのでしょう。そして彼もやがて思春期を迎え、人間の少女に心を惹かれたりもするのですが・・。

本書の「(番外編)ラクの話」は、『続ジャングル・ブック』に収録されていた短編で、成人になったモーグリが最終的に人間社会に戻っていく物語です。ただし、人間社会といってもインド人社会ではないのは「やはり」というところです。

本書からも割愛されていますが、『ジャングル・ブック』とはアザラシやマングースや象飼いの少年など、モーグリとは関わらない話も含む短編集とのことです。「ジャングルの掟」と対照的なカースト制度が批判されているなど、19世紀イギリスの植民地観や教育観が満載なのですが、そこはスルーしておくところなのでしょう。

2016/12