りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

当確師(真山仁)

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アメリカの大統領選、イギリスの国民投票、日本の参院選都知事選と、今年は世界的に選挙の当たり年のようです。ただ、私たちは選挙で何を選んでいるのでしょう。選挙版ハゲタカと言われる本書は、その問題を問い返しているようです。「デモでは何も変わらず、政治を変えていくには選挙しかない」と主張する著者の想いが込められた作品です。

主人公は、高額の報酬をもらって当選率99%を約束する、選挙コンサルタント聖達磨。勝利のためには手段を選ばない、なかなかのダーティ・ヒーローなのですが、決して口にしないものの「選挙でこの国を浄化する」という希望を持ってもいるのです。

彼が今回引き受けたのは、政令指定都市・高天市長選挙で、再選確実と言われる現職市長を打倒するというミッション。表向きは「理想に向かって邁進する革新派」であるのに、あらゆる手段を講じて強権政治を敷いている剛腕を危惧する反市長陣営が依頼主。しかしそこには、隠された動機もありそうです。

対抗馬に選ばれたのは、病気で聴力を失いながらNPO法人の代表を務める黒松幸子。鏑木の妻・瑞穂の親友でもある幸子は、市長の政策に正面から対抗することなく、より良い代替案を認めさせてきた実績もあるのですが、このままでは勝ち目はゼロ。身内をも分断し、裏切りに裏切りを重ねて壮絶化する市長選挙の結果はどうなるのでしょう。

日本未公開ですが、サンドラ・ブロック主演の「Our Brand Is Crisis」を思い出しました。不人気候補を南米の某国の大統領に当選させるコンサルタントの物語。当選した候補が選挙後に豹変するところも一緒です。もっとも南米の大統領と日本の市長では、豹変の仕方が全く異なるのですが。

2016/8