その第1作は「ゲバラ覚醒」との副題をつけた青春篇。中心となるのは、大学卒業前に親友ピョートルと出かけた南米縦断バイク旅行と、アルゼンチンの大統領夫人エバ・ペロンことエビータとの交流。もちろん著者の創作です。ピョートルのモデルは医師グラナードであり、ペルーのハンセン病療養所訪問までは実話と近いものがありますが、ラストは全く異なっています。
エビータとの交流は不明ですが、ミュージカル「エビータ」で彼女の活動を冷めた目で眺めるチェのモデルがゲバラとされていることろからの連想でしょう。映画版でアントニオ・バンデラスが演じた主択級の人物です。本書のゲバラは、エビータと深い所で結びついていたとされています。
ともあれ1951秋~1952年春にかけての南米旅行が、若きゲバラの覚醒を促したことは、想像に難くありません。チリではアジェンデと親交を結び、エクアドルではユナイテッド・フルーツ社の横暴を目のあたりにし、ボリビアでは銅鉱山の労働者たちの絶望に触れ、ペルーではハンセン病療養所でボランティア活動をした後にCIAの歴史学者とともにマチュピチュを訪問。
この南米旅行は「モーターサイクル・ダイアリーズ」として映画化されていますが、未見です。先住民たちの貧困と無権利状態を体験したゲバラは、やがて詩人となる道とも、医者になる道とも決別し、革命家となっていくのですが、そのあたりは次巻以降で描かれていくのでしょう。
2017/5