りぼんの読書ノート

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キャロリング(有川浩)

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クリスマス倒産が決まった「子供服メーカー 兼 学童保育所」に勤めている俊介と柊子。一時は恋人同士だった2人が別れたのは、俊介の育った過酷な家庭環境にありました。俊介はそれを説明できず、家族愛に包まれて育った柊子はそれを理解できなかったのです。

一方で、別居中で離婚間近の両親を持つ少年・航平は、何とかして両親を仲直りさせようと、柊子の同情心を利用しようと画策します。それは彼らを大事件に巻き込んでいくことになるのですが、「クリスマスの奇跡」は起こるのでしょうか。

演劇化を前提に書かれた作品であるせいか、セリフ過剰で、ドタバタの展開になってしまいました。闇金融の取立て屋が登場するあたりは、「吉本新喜劇」を想像してしまったほど。しかし、それでも著者の持ち味は損なわれていないのです。いまどき口にするのが恥ずかしいほどの純粋さと繊細さこそが、この著者の魅力なのですから。有川浩版の『クリスマス・キャロル』でしょう。

2016/7