りぼんの読書ノート

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連鶴(梶よう子)

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2016年上期の直木賞候補になった作家ですが、今までノーマークでしたので、とりあえず最近の作品を読んでみることにしました。

本書の主人公は、幕末の動乱の中で苦悩する桑名藩士の速見丈太郎。江戸詰めの身で京の情勢はわからないながら、京都所司代を務める藩主に殉じる覚悟を決めています。一方で、横浜の商家の婿養子となった弟の栄之助は、薩摩藩との交流があるらしく、謎めいた行動を取っています。

この兄弟の悩みは、桑名藩そのものの悩みです。桑名藩は開城恭順を決めたものの、会津藩主・松平容保実弟である藩主・松平定敬は、一部藩士を率いて柏崎・会津・函館と最後まで抗戦し続けるのですから。当然その中で、藩士たちの運命も分かれて行くことになったのでしょう。

タイトルの「連鶴」とは、1枚の紙から2羽から100羽近くまで繋がった千羽鶴を折ることができる、桑名藩に伝わる折鶴のこと。道は違えども「繋がっている」ことが、兄弟の絆を象徴するものとして扱われています。

ただ、途中で大義を見失ってしまう主人公の悩みが深いため、本書は全体的に暗いですね。冒頭の坂本竜馬暗殺事件も、とってつけた感じがしてしまいます。著者は「優しい目線とユーモラスで味のある文章」の持ち主ということですので、次はもっと明るい作品を読みたいものです。

2016/7