りぼんの読書ノート

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2016/6 サラバ!(西加奈子)

西加奈子さんの直木賞受賞作は、ストーリー・テラーとしての力量を見せてくれただけでなく、アーヴィングやコンロイを彷彿とさせるほどの迫力に満ちた作品でした。文句なしに、今月の1位です。

池澤夏樹編「日本文学全集 第3巻」は、『源氏物語』前後に成立した物語を5編収録しています。西暦がキリスト生誕を境にして紀元前・紀元後としているように、日本文学においては「源氏前○年」、「源氏後○年」として年表を作っているのは興味深かったですね。現代語への翻訳者たちも、錚々たるメンバーが揃っています。
1.サラバ!(西加奈子)
1977年5月にテヘランで生まれ、後にエジプトで小学生時代をすごした主人公の設定は、男女の違いこそあれ、著者自身と同じです。家族に振り回され、時代に押し潰されそうになった主人公を救ったものは、何だったのか。一時は絶望の底に沈んだ主人公が「自分が信じるものは自分で決めるという決意」に至る、静かな闘いの物語の結末は、感動的です。

2.日本文学全集3(池澤夏樹編)
源氏物語」の前後に生まれた「初期の物語」には、SF、ユーモア、断章、私小説、紀行文、自伝文学と、「物語の原型」が全て詰まっていたのですね。錚々たる現代語訳者たちが、物語の核である和歌をどのように訳したのかにも、それぞれの個性が現れています。




2016/6/30