りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

となりのセレブたち(篠田節子)

イメージ 1

篠田さんの短編小説集ですが、結構以前に書かれた作品も含まれているようです。「となりのセレブたち」というタイトルも、かなり無理して纏めた感じがします。強いて5編の共通項を括ると、「何でもお金で解決しようとする人=セレブ」ということにでもなるのでしょうか。

「トマトマジック」
ティーパーティに紛れ込んだ、芸術家気取りの女に苛立つセレブ妻たち。社会人になったばかりの娘がその女に傾倒しつつあるようなのも、不愉快です。しかし、その女が持参した「マジックトマト」を間違って料理に入れてしまったために、皆、幻覚に襲われてしまいます。そして彼女たちの本音が剥き出しに・・。

「蒼猫のいる家」
娘の世話も義母に依頼して話仕事一筋に生きてきた結果、家庭内に居場所を失ってしまった妻。娘の誕生日プレゼントとして、苦手にしていたネコまで飼われ始める始末。しかし彼女を理解してくれたのは、そのネコだけだったのです。

「ヒーラー」
女たちの美容願望も、男たちの性的欲望も満たしてくれる謎の生物とは何なのでしょう。次第に吸い取られていくのは生命力なのか。それとも全てはウィルスの仕業なのか。いや、そもそもは「地球の意志」だったのかもしれません。今回は警告だったのかも。

「人格再編」
既読のルーティーンに収録されていました。これはもう、SFですね。

「クラウディア」
全てを失って、冬季に無人の山小屋に逃げ込んだカメラマンを助けてくれたのは、犬のクラウディアでした。しかし彼は、犬にすべてを支配されるペットに成り下がってしまうのです。そこに謎の女が行き倒れ状態で登場し、転機が訪れたかに思えたのですが・・。ご主人様の写真を撮って生きていくのも、悪くないかもしれません。

2016/7