りぼんの読書ノート

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妖星伝 4 黄道の巻(半村良)

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外道皇帝が、地球を「生命が生命を喰らい合う地獄の星」としてまで発信したかった情報とは、「意志を持った時間」についての警告だったことは、前巻神道の巻のラストで予告されています。しかし、それについての説明はいったんお休み。また外道皇帝らポータラカ星人も、ほとんど出番はありません。

本巻で主役級の活躍を見せるのは、美貌の尼僧・天道尼です。外道皇帝が作り上げた「因果の歪み」を正すために生まれたという天道尼の使命は、外道皇帝を滅ぼすことだというのです。しかし、鬼道衆の総力をあげた攻撃をたやすく躱して大損害を与えた天道尼にも、弱点がありました。因陀羅は、彼女の鋭敏なテレパシー能力を逆手にとって大勢の淫欲を送りつけ、究極の快感で痺れさせてしまうという、大衆週刊誌好みの反則技を仕掛けるのですが・・。

一方で、鬼道衆の首領である宮毘羅・日天と因陀羅・信三郎は、ついに伝説の黄金城を探し当てます。しかし、それは「この世の外」なんですね。「壺中の天」とか「陋」とか「虚」とか、仏教の言葉を用いてさまざまな解釈がされますが、要するに一種の亜空間。生きた身体を有しては入れない世界ですが、「夢」という通路があったのです。

宇宙人の存在を明らかにしてから一度は落ち着きかけた物語ですが、天道尼をめぐる性欲と、黄金城をめぐる物欲によって、物語が始まったころのワイルドさが戻って来たようです。収束に入る前に、もっと物語を広げて欲しいものです。結末は多少破綻しても、そのほうが面白いですから。

2016/6再読