りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

あなたへの歌 (楊逸)

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中国出身でアラサー女子の華明月(メイ)は、東京のお菓子メーカーに勤める傍ら、中国語講師の副業を始めたところ。ずっと煮え切らない態度だった日本人の彼が、天津への転勤が決まった途端にプロポーズしてきて、かえってとまどってしまいます。結婚はしたいけれど、仕事を続けたいというメイの悩みを、彼は理解してくれないのです。

そんなある日、中国語講座の生徒である片瀬さんから「中国人の妻・阿桂の連れ子が天津に家出をしてしまった」と連絡が入ります。思わぬ展開から、阿桂の息子を探して回ることになってしまうメイは、彼女の隠された過去を知ってしまうのですが・・。

国際結婚は、あちこちに地雷がありますね。「中国人はみんな勝手」という彼の言葉を聞いたメイが、「妻として我慢できても中国人として許せない」と思ってしまうくだりなど、ドキッとしてしまいます。メイの姉の「夫婦喧嘩を国際問題に発展させるな」という冷静な指摘があって、笑ってもいいところだとわかりますが、メイとしては収まりませんね。

中国語講座の生徒たちに同行した中国ツアーの楽しい場面と、阿桂の過去をたどるシリアスな場面が、同時進行するギャップが、いい味を出しています。日本人と中国人の感覚のギャップ。男性と女性の感覚のギャップ。本書の設定である2000年頃と現代の感覚のギャップ。さまざまなギャップを楽しめるだけでなく、そのギャップを埋めたところにある暖かさを感じることができる作品です。

2016/5