物語は4人の視点から語られます。1人めは、第8代将軍義政の実弟・義視。兄から継嗣と名指しされながら、いつまでも将軍の座に就けず、義政に男子が生まれたことで乱の一方の旗印とされてしまった人物。彼は周囲に担がれて流されていただけでした。
2人めは、義政の正室として辣腕を振るい、自らの腹を痛めて産んだ義尚をついに将軍の座に就けた日野富子。彼女はただ、一族の繁栄を願っていただけだったのです。3人めは、義視の後援者との立場から、東軍の指導者としてライバル山名宗全との戦いを拡大させていった細川勝元。平和な世を願いながらも実力不足だった勝元は、ただただ責任の重さに押しつぶされそうになっていました。
そして4人めが、その優柔不断な態度から継嗣争いの原因を作り、「応仁の乱」が始まった後も己の世界の中に生き続けた足利義教です。誰からも責められる義政ですが、彼は新時代を作り上げようというビジョンのもとに行動していたというのが、本書の新解釈。
すでに拡大していた「下剋上」の風潮を食い止めて、長く続く平和な世を築くには、大所領所有者と政治執行者を区別し、家督相続の規則と士農工商の別を厳格にすることが必要だと、義政は認識していたというのですね。要するに徳川幕府に道を開くために既存の政治を壊した・・というのですが、ちょっと無理筋かもしれませんね。戦国時代は100年も続くことになったのですから。
2016/4