りぼんの読書ノート

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猫城(南条竹則)

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金を使い果たして無宿人となった詩人は、最後の仕事となった九州の大学での講演の後で東京に戻ることなく、別府とおぼしき温泉地に流れ着きます。そこは野良猫の多い町であり、「政宗」と名付けた隻眼の大きな虎猫の前で「猫を捨てるな」と書かれた呪符を破り捨てた詩人は、どうやら猫たちに気に入られた模様。

猫たちの導きで不思議な安宿に移動することができ、そこで出会った猫のような髭を持つ老人からは、毎晩おいしい料理を振る舞ってもらえるようになるのです。しかし、タダほど高いものはないのです。詩人は、「猫文字=ニャンスクリット語」で書かれた猫族の歴史書物「万猫譜」を読み解き、その続きを書くことを強要されてしまうのです。

「万猫譜」に綴られた、古代エジプトに端を発し、中世のヨーロッパや中国を経由して日本へとやってきた猫たちの歴史がいいですね。なかなか味のあるエピソードが登場します。その「続き」とは、温泉地にある猫城の殿さまが、鍋島の猫姫様を嫁に迎えるために必要だったのですが、それを快く思わないバケモノたちも登場して、激しい戦闘が起こったりもするのです。果たして、猫たちと、猫たちの奴隷のような境遇になってしまった詩人の運命はいかに?

著者独特の文体が、内容にマッチしていますね。黙読してもリズムを感じるほどですから、「声に出して読みたい」作品なのかもしれません。南伸坊氏による「猫殿様」の表紙絵も、いい味を出しています。

2016/4