りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2015 My Best Books

今年も最後に1年を振り返っての「ベスト本」を選んでみます。

長編小説部門(海外)

アルタイ(ウー・ミン)

4人の匿名イタリア人作家集団による共作です。「レパントの海戦」の前夜、トルコ王のもとでキプロスユダヤ人の王国を建設するという夢を共有した人々の物語。「匿名の作家群」による「敗者の叙事詩」は、時代や人種を超えて人間に共通する、普遍的な問いを内包しているようです。

他の候補は、同じイタリアの作家集団による前作『』、ジュンパ・ラヒリの10年ぶりの第2長編『低地 』、カズオ・イシグロのファンタジー的作品『忘れられた巨人』など。

長編小説部門(日本)

満州国演義(船戸与一)

遺作となった作品です。全9巻のシリーズで著者が描いたものは、わずか13年しかない満州国の興亡ではなく、明治維新後80年の間に興隆して破綻した日本の民族主義の歴史だったようです。複眼的な視点によって歴史を立体的に描き出す手法は、最後の最後まで冴えわたりました。

他の候補は、明治期の遊女たちの決起を描いた『ゆうじょこう(村田喜代子)』、著者初の歴史ファンタジーかたづの!(中島京子)]』、日本SFの到達点といえる『エピローグ(円城塔)』など。

短編小説部門

古事記(池澤夏樹編)

古事記を「短編小説」に分類するものではないのでしょうが、あらためて読んだ日本の神話は混沌とした迫力に満ちていました。古事記に登場する神々、神社、地名、氏名の由来などが現代まで伝えられている、日本の歴史の継続性にも感動を覚えます。

他には、村上春樹さんの新作短編集『女のいない男たち』や、それぞれ作風の異なる台湾の作家による『歩道橋の魔術師(呉明益)』と、『神秘列車(甘耀明)』など。

ノンフィクション部門

ひみつの王国 評伝石井桃子(尾崎真理子)

『プーさん』や『ピーター・ラビット』を翻訳し、『星の王子様』や『ちびくろサンボ』を紹介し、『ノンちゃん』}}}を生み出し、「岩波少年文庫」を立ち上げ、児童文庫の普及に努め、2008年に101歳で亡くなるまで「児童文学」に全てを捧げた石井桃子さんの評伝です。「大人になってからのあなたを支えるのは、子ども時代のあなたです」という言葉に、著者の思いが込められています。

伝説の写真家の秘められた謎に迫った『キャパの十字架』と最後まで悩みましたが、新作のほうを選びました。ユン・チアンの『西太后秘録]』は、前2作と比較するとパワーに欠ける感がしました。


今年も素晴らしい本とたくさん出合えました。2016年もいい1年にしたいものです。家庭も、仕事も、読書も、そして健康も。来年もよろしくお願いいたします。

2015/12/29