今年も最後に1年を振り返っての「ベスト本」を選んでみます。
長編小説部門(海外)
アルタイ(ウー・ミン)
4人の匿名イタリア人作家集団による共作です。「レパントの海戦」の前夜、トルコ王のもとでキプロスにユダヤ人の王国を建設するという夢を共有した人々の物語。「匿名の作家群」による「敗者の叙事詩」は、時代や人種を超えて人間に共通する、普遍的な問いを内包しているようです。長編小説部門(日本)
満州国演義(船戸与一)
遺作となった作品です。全9巻のシリーズで著者が描いたものは、わずか13年しかない満州国の興亡ではなく、明治維新後80年の間に興隆して破綻した日本の民族主義の歴史だったようです。複眼的な視点によって歴史を立体的に描き出す手法は、最後の最後まで冴えわたりました。短編小説部門
古事記(池澤夏樹編)
古事記を「短編小説」に分類するものではないのでしょうが、あらためて読んだ日本の神話は混沌とした迫力に満ちていました。古事記に登場する神々、神社、地名、氏名の由来などが現代まで伝えられている、日本の歴史の継続性にも感動を覚えます。ノンフィクション部門
ひみつの王国 評伝石井桃子(尾崎真理子)
『プーさん』や『ピーター・ラビット』を翻訳し、『星の王子様』や『ちびくろサンボ』を紹介し、『ノンちゃん』}}}を生み出し、「岩波少年文庫」を立ち上げ、児童文庫の普及に努め、2008年に101歳で亡くなるまで「児童文学」に全てを捧げた石井桃子さんの評伝です。「大人になってからのあなたを支えるのは、子ども時代のあなたです」という言葉に、著者の思いが込められています。今年も素晴らしい本とたくさん出合えました。2016年もいい1年にしたいものです。家庭も、仕事も、読書も、そして健康も。来年もよろしくお願いいたします。
2015/12/29