りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2015/11 パールストリートのクレイジー女たち(トレヴェニアン)

今月の1位は、トレヴェニアンの遺作となった自伝的な作品にしました。途中まで、「クロニクル4部作」が凄い作品だと思っていたのですが、最終巻のエンディングの読後感が悪すぎます。まだ20代と若い時代小説作家・谷津矢車さんの作品には「伸びしろ」を感じました。
1.パールストリートのクレイジー女たち(トレヴェニアン)
匿名で多彩な作品を執筆し続けた作家の遺作となった、自伝的な作品です。大恐慌後から第二次大戦にかけての時期に、スラムの母子家庭で育った少年の成長物語。少年の視点から見たスラムの住民たちの描写が、その時代のアメリカを映し出します。そして、最もクレイジーだった、若く美しい母親に対する感情の変化が、少年の成長を感じさせてくれるのです。

2.笹の舟で海をわたる(角田光代)
疎開先で出会った少女が、後に義理の姉妹となったのは、偶然ではなかったのでしょうか。平凡な専業主婦となった左織は、自分の意志で人生を切り開いていく風美子に、複雑な感情を抱きます。「笹舟で流されてきたような人生」は、頼りないものなのか。それともしなやかな生き方なのか。角田さんが描く「母の世代の女性たちの物語」です。

3.クロニクル4部作(リチャード・ハウス)
第1部:トルコの逃避行
第2部:砂漠の陰謀
第3部:ある殺人の記録
第4部:最後の罠
中東を舞台にした陰謀と汚職事件は、不可解で不条理な殺人事件とどのように結びついているのでしょうか。同じ暴力のモチーフは、なぜ何度も繰り返して現れるのでしょうか。それは、被占領者が占領者に抱く屈折した思いと関係しているのでしょうか。「まとまりがなく、不快で、なんの理由も書かれていなければ、謎の解明もされていない」物語なのですが、妙に気になるのです。



2015/11/30