1.ボーン・クロックス(デイヴィッド・ミッチェル)
1984年夏、ごく普通の娘にすぎないホリーは、母との喧嘩で家出したある日、謎めいた老婆と出会って不思議な約束を交わします。その後、1991年には学生ラムが、2004年にはジャーナリストのエドが、2015年には作家クリスピンが、ホリーと人生を交差させる中で不思議な体験をすることになります。それは遠い過去から続く「時計学者」と「隠者」の時間を超えた戦いの一幕だったのです。『鬼滅の刃』の戦いに巻き込まれた第3者のような思いを、登場人物も読者も味わってしまいますが、死すべき運命と向き合うことをテーマとした壮大な作品です。
2.プロジェクト・ヘイル・メアリー 上下(アンディ・ウィアー)
火星や月でのDYI的サバイバル生活をリアルに描いてきた著者の新作の舞台は、深宇宙でした。人類の存亡をかけて他の恒星に送り出され、ただひとり生き残った男は、ミッション・インポッシブルを達成できるのでしょうか。思いがけないバディの登場を含めて、かなりチャレンジングな作品です。
3.後悔の経済学(マイケル・ルイス)
経済ノンフィクションである『マネーボール』や『世紀の空売り』の著者が綴った「認知心理学」の誕生物語。「人間の直感はなぜ間違うか?」という命題を突き詰めて、あらゆる学問の常識を覆した2人の天才心理学者の共同研究は「プロスペクト理論」として結実し、後にノーベル経済学賞を受賞するに至るのです。無数のデマやフェイクニュースを見破るためにも、認知のパラドックスについて知ることがますます重要になっていているように思えます。
【次点】
・メアリ・ジキルと怪物淑女たちの欧州旅行1ウィーン篇(シオドラ・ゴス)
・メアリ・ジキルと怪物淑女たちの欧州旅行2ブダペスト篇(シオドラ・ゴス)
・年年歳歳(ファン・ジョンウン)
【その他今月読んだ本】
・宗歩の角行(谷津矢車)
・古いシルクハットから出た話(アヴィグドル・ダガン)
・プリンス(真山仁)
・ロスト・ケア(葉真中顕)
・るん(笑)(酉島伝法)
・老神介護(劉慈欣(リウ・ツーシン))
・香君 上 西から来た少女(上橋菜穂子)
・香君 下 遥かな道(上橋菜穂子)
・太陽・惑星(上田岳弘)
・吾輩は猫画家である(南條竹則)
・猫を棄てる(村上春樹)
・地球の果ての温室で(キム・チョヨプ)
・ええじゃないか(谷津矢車)
・満洲国グランドホテル(平山周吉)
・残された人が編む物語(桂望実)
・三体0 球状閃電(劉慈欣(リウ・ツーシン)
2023/8/30