りぼんの読書ノート

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メアリ・ジキルと怪物淑女たちの欧州旅行1ウィーン篇(シオドラ・ゴス)

人体改造医学や錬金術が突出して発達していた19世紀末のロンドンで、妖しい技によって生み出された娘たちの冒険を描いた3部作の第2作。登場するのはジキル博士の娘である淑女メアリと、ハイド氏の娘で野生児ダイアナの異母姉妹。ラパチーニの娘で毒を持つベアトリーチェ。ドクター・モローが生み出した豹娘キャサリンフランケンシュタイン博士が蘇らせたジュスティーヌ。

 

第1部の『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』では彼女たちが結集して、名探偵ホームズとワトソンと協力関係を結び、彼女たちを付け狙う錬金術師協会を撃退するまでが描かれました。第2部にあたる本書は、彼女たちがヴァン・ヘルシング教授の娘ルシンダから救出依頼の手紙を受け取ったところから始まります。

 

オリエント急行でウィーンに向かったメアリ、ダイアナ、ジュスティーヌは、ホームズからの協力依頼を行けたアイリーンの助けを得て、ルシンダを精神病棟から掬い出すのですが、どうやら彼女は精神も身体も普通ではありません。どうやら謎は、一方で留守番役だったキャサリンベアトリーチェは、錬金術師協会の新たな企みを知り、旧知のサーカス一座に紛れ込んでウィーンへと向かいます。しかしそこでアイリーンから聞かされたのは、馬車でブダペストへ向かったメアリらが行方不明になったという知らせでした。どうやらそこで開かれる錬金術師協会とヴァン・ヘルシングの会合が、極めて重要らしいのですが・・。物語は第3部「ブダペスト篇」へと続いていきます。

 

とにかく楽しい作品です。主役の「娘たち」のキャラが立っているのみならず、家政婦やメイドも含めた女性たちの仲の良さが、全編を通じてあふれ出てくるのです。女性の権利が著しく制限されている時代に「女性だけのシェアハウス」を維持するのは金銭的にも大変なのですが、彼女たちの多くが父親から実験台にされた存在であることを忘れてはいけません。彼女たちは自由を謳歌し続けられるのでしょうか。そして吸血鬼的な兆候を示しているルシンダの運命はどうなるのでしょう。

 

2023/8