りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

vN(マデライン・アシュビー)

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タイトルの「vN」とは「フォン・ノイマン式自己複製ヒューマノイド」のこと。食物でエネルギーを補給して成長し、「複製」を生んで同じクレード(系統)を増やすこともできる機能を備えています。もちろん、
ロボット三原則」のような「フェイルセイフ」が組み込まれているのですが、それは、無条件で人間を愛し、服従し、人間が傷付く様子を見ると機能不全に陥るという極端な性質のもの。

vNの母親シャーロットから複製された5歳のエイミーは、人間の父親との3人暮らしをしており、人間と同じ成長スピードで育てられています。しかし、幼稚園の卒園式に現れたvNの祖母ポーシャの襲撃で、彼女の生活は一変してしまいました。

母親を襲ったポーシャを倒した所までは良かったのですが、ポーシャの意識が彼女の中に居座ってしまったのです。しかもポーシャの「フェイルセイフ」は作動しておらず、その性質は母親経由でエイミーにも遺伝しているというのです。彼女を助けてくれた男性型vNのハビエルとともに逃亡生活を始めたエイミーは、事あるごとに主導権を奪おうとするポーシャと戦いながら、自分の存在意義を問い続けていきます。

なんとなく「惜しい」作品です。「ブレードランナー」や日本製アニメをはじめとする「アンドロイドもの」に言及しながらも、表面的な参照にすぎません。「ゾンビ・ホラー」的なテイストを持ちながら、高慢と偏見とゾンビほど開き直ってもいない。ラストに登場する「巨大な存在」も意味不明でした。

とはいえ、この種の物語を著すなかで、「人間の支配からの解放」とか、「ロボットの世代間対立」とか、「ロボット同士の恋愛感情」などという、短絡的でわかりやすいテーマに陥らなかっただけでも、凄いことなのかもしれません。まだ、デビュー作なのですし。

2015/5