りぼんの読書ノート

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すかたん(朝井まかて)

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「すかたん」とは、大阪弁で間抜けな人を罵る言葉です。江戸から大坂詰めへと転任した夫の急死後も、大阪で自活している知里は、江戸の言葉や感覚が抜けずに、大阪人からは「すかたん」扱い。ひょんなことから大坂でも有数の青物問屋の奥女中として住み込み奉公することになったのですが、お家さんにいびられ、慣れない仕事や習慣にも四苦八苦。しかしこの家には、知里以上の「すかたん」がいたのです。

それは、若旦那の清太郎。おっちょこちょいで遊び人なのはまだしも、野菜にかける情熱が度を越しているのです。家業どころか船場の問屋仲間を全て敵に回して、難波の農家の立ち売りを実現させるために陳情してしまうという暴走ぶり。しかし、利権に安住するのではなく、「生産者があってこその問屋」という立場を崩さない清太郎を応援するうちに、いつしか知里の気持ちも・・。

著者は、「大坂商人=がめつい」という印象を払拭したかったと語っています。江戸生まれの知里が、「大阪商人=かっこええ」と思うようになっていく過程が本書の読ませ所ですね。確かに、意味を考えて美しくお金を動かし、生産と物流のバランスを大切にしていくというのは、商業のありかたとしてもかっこいいのです。
知里のライバルとなる芸者の小万だって、お金の使わせ方は粋なもの。

大坂に「立売堀(いたちぼり)」という地名があるので、さては本書と関係あるのかと思ったのですが、違いました。もとは「仙台の伊達氏が大坂の陣で堀をつくったところが、「伊達堀(だてぼり)」→「いたちぼり」となり、後に材木の立売りが許可されたため、「立売堀」の漢字が当てられるようになったとのことです。

2015/5