りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

シップブレイカー(パオロ・バチガルピ)

イメージ 1

ねじまき少女で独自のダークな未来図を描いた著者による「ヤングアダルト」なんて、ほとんど形容矛盾。とても心配だったのですが、大丈夫でした。悲惨な現実と未来への希望を同居させるという、離れ業が演じられています。

独自の世界観は健在です。資源枯渇と海面上昇が進んだ世界。大半がスラム化した世界で先端テクノロジーを独占する少数の特権階級。ドラッグを服用して暴力を振るう父親リチャードを恐れながら、廃船から金属を回収するシップブレイカーとして最底辺の生活をおくっている少年ネイラーが生きる世界の厳しさが、中盤近くまで描かれます。

そんなネイラーが、激しいハリケーン座礁した高級船を発見して、物語が動き出します。船内でただ1人生き残っていた美しい少女ニタは、「財閥の跡継ぎである私には、黄金よりも価値がある」と言うのですが、何やら謎がありそうです。彼女を狙う存在の手先となったリチャードから逃げ出して、2人の冒険が始まるのですが・・。

「カロリー企業」や「チェシャ猫」こそ登場しませんでしたが、高空に打ち上げた帆で偏西風を受けて飛ぶように進む高速クリッパーや、遺伝子操作によって生み出された主人忠実な「半人」など、著者らしいガジェットも健在です。

2015/3