小説家のるみ子は、祖母・豊世(とよせ)の死の直前に、「一族の秘密」を書いてほしいと頼まれます。祖母には、年をとる速度が異様に遅いために人目を避けてきた双子の妹・嘉栄(かえい)がいたのです。思えば一族の歴史は、実家にはめったに寄り付かず、真相を知らされるまではるみ子も「親戚のおばさん」と思っていた女性を中心に回っていたのでした。
ファンタジーのようですが、著者の狙いは「時間の肌触り」を描くことにあったようです。時間の流れ方が他人と違う女性を、祖母、母、孫(るみ子)の3代の女性と関わらせることで、「人生という時間の感覚」を意識させようと試みたというのですが、「ヴァンパイアもの」との違いは「リアリティ」ということなのでしょう。
小説家のるみ子が「公表しないつもりで書いた文章」という形式をとっている本書は、ラストに異なる視点を持ってくることで、「書くこと」の意味を問い直しているようです。そちらのほうが、著者の「真のテーマ」だったのかもしれません。
2014/12