りぼんの読書ノート

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天冥の標2.救世群(小川一水)

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日本を代表するSF作家である著者が、「できること全部やる」との覚悟で書き綴っている超大作の第2巻です。本書では、第1巻メニー・メニー・シープで存在が示された7つの勢力のうち、「医師団(リエゾンドクター)」、「亡霊(ダダー)」、「救世群(プラクティス)」の由来が明らかにされることになります。

物語の始まりは、西暦201X年。後に「冥王斑」と呼ばれることになる謎の疫病の発生でした。救援要請に応えてパラオへと向かった国立感染症研究所の児玉圭伍と矢来華奈子は、肌が赤く爛れ、目の周りに黒斑をもつリゾート客たちの無残な姿を見出します。この疫病の特徴は、極めて高い致死率に加え、完治した者からも感染するということ。ひとたび罹患した者は、たとえ運よく生き延びたとしても普通の社会に戻ることは叶わないのです。

「医師団」の懸命な拡散防止策を嘲笑うかのように、「冥王斑」は世界中に広がろうとしています。感染源を探し求める華奈子がニューギニア奥地で発見したのは、クトコトと呼ばれる謎の生物。どうやら「冥王班」は、人類をターゲットとして宇宙から持ち込まれた感染症のようなのです。誰が、何のために・・。

日本人の回復者第1号は、高校生の檜沢千茅でした。回復者としてのあらゆる辛酸をなめた彼女は、世界冥王斑患者群連絡会議が設立された際に、日本支部長となります。これが後に「救世群」になっていくのですね。一方で、「ダダー」なる存在も登場。長らく地球の羊の遺伝子に展開していた、ノルルスカインなる「活動体」が、羊ゲノム解析と同時にネットワーク上の知性体となったというのですが、その起源はまだ謎に包まれています。

本書だけをとってみると、バイオSFの定番であるパンデミックものにすぎず、その展開は常識的なのですが、背景はどこまで広がるのでしょうか。この後の展開に期待しましょう。

2014/9