りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

オマル(ロラン・ジュヌフォール)

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地球の5000倍にもおよぶ表面積を有する巨大惑星オマル。そこに暮らすヒト族、シレ族、ホドキン族の3種族は、いずれも古代に惑星外から移住してきたのですが、もはや起源は明らかではありません。

何者かの導きで飛行船イャルテル号に乗りこんだ3種族6名の男女は、それぞれ22年前に発券された乗船券と、タマゴの殻の欠片を持っています。海賊に襲われて半壊した飛行船に残された6名は、それぞれの物語を順に語っていくのですが、このあたりの展開は、ダン・シモンズハイペリオンのようですね。

家畜人として異種族から使役された過去を持つ、麻薬中毒のアレクサンデル(ヒト族男性)。教会から迫害を受けた小説家カジュル(ヒト族男性)。不老不死の秘宝を授かったアメス(ホドキン族男性)、太陽崇拝教の支援を受けて天文学を研究していた船医のハンロルファイル(シレ族男性)、将軍の地位から転落して海賊となったシカンダイルル(シレ族女性)。宗教上のタブーを乗り越えて市長となったものの、守旧派に追放された過去を持つタフなシェタン(ヒト族女性)。

実はこの6人を選んで呼び出した人物がいたのです。ここが人工的な世界であることは冒頭から明らかですので、6人がそれぞれの役割を果たすことで、惑星オマルの誕生の秘密や目的などが明らかになるのではないかと想定していたのですが、一部しかクリアになりませんでしたね。続編もあるようですので、小出しにしているのでしょうか。

本書のポイントは、「宗教や哲学や感情や身体的特徴の異なる、複数種族が共生できるのか」という点にあるのでしょう。現実の世界で増加している移民問題とも結びついているテーマであり、さすがに「猿の惑星」の原作を生み出したフレンチSFです。

2014/8